第2回/肌の乾燥対策
2015年10月28日記載
この前コラムを書いた時は連日うだるような暑さでしたが、月日の過ぎるのは早いもので、もう秋本番ですね。
そこで、今回はお肌の乾燥対策について、少しお話してみたいと思います。
お肌の潤いの大切な『成分』について
空気が乾燥してくると、どうしてもお肌も乾燥しがちですよね。そこで、化粧水を浴びるようにつけて安心していませんか。化粧水だけでは蒸発してしまいます。だからといってその上に油分で膜を張ればその下の水分は蒸発しないというのもちょっと違っていて、実際は油分の間をぬって水分は蒸発します。
お肌の潤いの大切なのは水分をキャッチするセラミドという角層間脂質です。
角層間脂質にもいくつか種類があるのですが、この中でセラミドが水分と結合する力が最も強いのです。普通、水と油は分離するのですが、ラメラ構造という形態を保ちながらセラミドはしっかり水分をキャッチしているのです。年齢とともに皮膚が乾燥しやすくなるのは、このセラミドが年齢とともに減ってしまうからなのです。
ちなみに私の医学博士を取得した際の研究テーマは、アトピー性皮膚炎患者におけるセラミドが減少する原因となる脂質代謝異常でした。現在ではすっかりセラミドは耳慣れてきた単語ですが、当時はセラミドを知っている一般の人はほとんどいない時代でした。
話は戻って、セラミドの他にも水分の含有力がすぐれたものがあります。ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、ヘパリン類似物質です。本来は皮膚の真皮という層にある成分ですが、肌に塗ると保湿能力があるもので、ヒアルロン酸は、強い保水力をもち、配合量の数百倍もの水を保持できるといわれています。吸湿性も強く、周囲の空気の水分まで吸着して肌を潤わせてくれます。コラーゲンは、真皮では弾力を保つのに大切な役割を果たしていますが、化粧品になると保湿成分として効力を発揮します。エラスチンもコラーゲンと同様です。ヘパリン類似物質は、保湿のほかに血行促進や抗炎症の作用もあり、最近は薬局でも購入できるようになっています。
この他にも吸湿性のある天然保湿因子(NMF)といって、アミノ酸、尿素、PCA(ピロリドンカルボン酸)などがこれにあたり、もともと角質細胞の中に含まれている成分です。しかし、洗顔などで失われやすい面もあります。保湿能力はそれほど高くはないのですが、さらっとしていて使用感がよいため、化粧水によく含まれています。このほか、大豆レシチン、ユーカリエキス、プラセンタなどたくさんの保湿剤が現在化粧品に使用されています。
このほかに、保湿剤という意味からはややずれるのですが、膜を張って皮膚の水分蒸散を防ぐという古典的な意味で(実際はその隙間からある程度蒸散するのですが)、ワセリンやオリーブオイル、ホホバオイル、スクワランオイルなどもあります。ただし、べたつきが気になる場合もあると思います。
以上が現在使用されている保湿剤で思いつく代表例ですが、これ以外にもきっとあると思います。
秋~冬の『乾燥対策』について
さて、これからは空気もどんどん乾燥してきますね。また、お炊事でお湯を使うと皮脂が溶け出してしまい、なおさらお肌の水分を保持するのが難しいですよね。
ですから、普段からぜひ乾燥しやすい部分にはこまめに保湿剤を塗るように心がけましょう。全身が乾燥で痒くなりやすい患者さまには、洗面所にも保湿剤を置いておくようにお話しています。入浴後タオルで水分を拭き取った後に保湿しておけば保湿ケアも習慣化しやすいですし、普段より楽に冬が乗り超えられると思います。保湿して皮膚を外的刺激から守るバリア機能を高めましょう。ちなみに、アトピー性皮膚炎はこのバリア機能の低下が原因でおこる疾患といわれています。
もし、以上のような保湿剤をご使用になっても乾燥が改善されない場合は、湿疹などの炎症がすでに始まっているかもしれません。そのような時には是非ご相談ください。もちろん保湿剤の処方もしておりますし、乾燥した口唇にお使いになりたい方へのケア商品のご用意もありますので、お気軽にお尋ねください。